上部消化管内視鏡検査により診断した犬の消化管内異物50症例の回顧的検討

○石川 朗1), 水本貴士1), 堀 小郁1), 遠藤美紀1), 町田健吾1),
池田雄太1), 宇賀田雅人1), 鑓田祐佳里1), 住田篤則1), 山田武喜1)
1) 亀戸動物総合病院

 

はじめに

消化管内異物は犬の臨床において一般的な疾患であり様々な臨床症状をしめす。上部消化管の異物に対しては、精度の高い診断と低侵襲な治療を目的として、内視鏡検査がおこなわれている。しかし、国内においてまとまった報告は散見される程度であり、内視鏡検査の実施にあたって必要な基礎的な情報が十分とはいえない状況と思われる。そこで今回、当院における症例を回顧的に検討したので報告する。

 

材料と方法

2008年3月から2011年10月までに上部消化管内視鏡検査により消化管内異物と診断した犬50症例を対象として、プロフィール・診断・治療・予後について検討した。

 

結果

解剖学的部位は食道11例、胃38例、小腸4例であった。犬種は26種で認められ、ミニチュア・ダックスフンドが8例と最も多かった。性別は雄23例、雌27例であった。発生年齢は中央値4歳齢(平均値4.56歳齢)で、1歳未満が7例と最も多かった。体重は中央値5.65kg(平均値8.73kg、最小1.70kg、最大34.66kg)であった。最も多かった症状は、食道内異物は吐出7例、胃内異物は無症状24例、小腸内異物は嘔吐3例であった。問診において、異物を食べた(かもしれない)を主訴に含むものは40例で、飼主の80%が異物の可能性を認識していた。さらに比較の対象として、同主訴で内視鏡検査をおこなったが異物が認められなかった症例を別に集計したところ11例であった。その結果、飼主が異物の可能性を訴えて内視鏡検査をおこなった場合、異物が診断された割合は78%(40/51例)であった。異物を食べた日を0日とした内視鏡検査までの日数は中央値0.5日(平均値1.64日)であり、50%(25/50例)は1日以内におこなわれていた。一方、28%(14/50例)で正確な日数が不明であった。CRPで異常値が認められた割合と平均値は、食道内異物85.7%(6/7例),14.22mg/dl、胃内異物29.4%(5/17例),3.35mg/dl、小腸内異物100%(3/3例),14.67mg/dlであった。食道内異物の種類はジャーキーが5例と最も多く、全例が内視鏡に関連した処置にて摘出された。胃内異物の種類は球形および扁平な形状のものが各12例と最も多く、87%(33/38例)が内視鏡により摘出され、バスケット把持鉗子が21例と最も使用された。胃切開術となった症例は大型犬が食べたボールである傾向がみられた。小腸内異物は全て手術で摘出された。内視鏡検査後の平均入院日数は食道内異物2.6日、胃内異物(内視鏡により摘出)0.1日、胃内異物(胃切開術)4.8日、小腸内異物4.7日であった。最終的な予後は49例で良好であった。

異物が認められた部位

胃内異物の種類

食道内異物の種類

 

考察

内視鏡検査は異物にたいする診断・治療の数ある手段のひとつである。消化管内異物の可能性があるとき、内視鏡検査の適用の判断が難しく、苦慮することがある。その一因として、症例ごとに問診・症状・異物の種類・検査結果などが大きく異なるという多様性があると思われる。今回の結果は、これをフィードバックすることにより、内視鏡検査が必要な症例を適切に選択するための基礎データとして、参考にできるのではないかと思われた。また、今後も症例を積み重ね、異物にたいする内視鏡検査の診断・治療の向上のため新たな検討をおこなっていく必要があると思われた。
(日本獣医内科学アカデミー2012年大会抄録を一部修正)