膀胱鏡を使用して尿路結石を摘出した犬の1例

亀戸動物総合病院 宇賀田 雅人

 

要約

血尿が出るという主訴で受診され、尿検査・レントゲン検査などにより膀胱結石が確認されたため、膀胱鏡を使用して開腹せずに膀胱結石を摘出した。

 

症例

ミニチュアシュナウザー メス 10歳 6.74kg
前日からの血尿を主訴に来院された。

 

検査

尿検査    : 尿中に赤血球、白血球は認められたが結晶は認められなかった。
超音波検査  : 膀胱内は浮遊物が多く、混濁していると思われる所見が得られた。
レントゲン検査: 膀胱の中に約3mm大の複数の結石が認められた。
【図1赤丸内】

腫瘤部の割面

 

診断

膀胱結石、それに伴う膀胱炎による血尿

 

治療

膀胱炎に対する内科治療を行い、その後、全身麻酔による膀胱結石の摘出を実施。結石の大きさ、動物のサイズなどから、より低侵襲で結石の除去が可能な膀胱鏡の使用が適応と判断された。

全身麻酔下にて膀胱鏡を使用し【図2】、
膀胱結石を摘出した。【図3】

図2 図3

 

考察

膀胱結石を摘出する際、膀胱切開は開腹手術であり、数日の入院を必要とすることが多い。
今回は膀胱鏡を使用することで膀胱切開とくらべ、より低侵襲に膀胱結石を摘出できた。
しかし膀胱鏡は、大きな結石は物理的に摘出できず、またメスの犬・猫、中型犬以上のオス犬は適応となるが、オス猫やオスの小型犬にはサイズの問題から使用できない場合が多い。
それでも動物へのストレスが少なく、より低侵襲に膀胱結石を摘出することが可能であり、術後の合併症も少なく、日帰りの処置が可能であるという点で手術より優れた方法といえるだろう。