体幹部にできた軟部組織肉腫の1例
亀戸動物総合病院 町田 健吾
要約
犬の軟部組織肉腫は、局所浸潤性が強く、遠隔転移が低い悪性腫瘍(癌)である。
この腫瘍の病態把握に有用であったCT・MRI所見を中心に報告する。
症例
犬 ミニチュア・シュナウザー 去勢雄 10歳
主訴
右体幹部皮膚にできた直径9㎝大の腫瘍を主訴に紹介来院した。
初診時画像検査
診断
組織生検、画像診断より軟部組織肉腫(T4 N0 M0)と診断した。
治療と経過
軟部組織肉腫は底部の固着も認められたため、周囲組織・体腔内への浸潤などの病変の広がりや、転移所見の有無を確認するためにCTを撮影した。胸腔内への浸潤や転移所見は認められなかったが、この時点では境界も不明瞭で完全に切除するのは困難と思われた。
リマダイルやプレドニゾロンにより縮小し、第42病日には触知できなくなった。
その後、しばらくして同部位に再発を認めた。内服に反応するものの完全には消失しないため、2回目のCTを撮影し、外科適応と判断した上で第323病日目に切除手術を行った。
その後、局所での再発が認められ、内服させたところ増大・縮小を繰り返した。その間、レントゲン・超音波検査による転移所見は認められなかった。
後躯麻痺が認められたため第891病日目にMRIとCTを撮影したところ、肺転移、腫瘍の深部への浸潤やそれに伴う椎体骨折、脊髄圧迫を確認された。
考察
CT・MRI検査により体幹部にできた腫瘍の広がりや転移を確認したところ、治療計画において有用であった。特に、初期段階における術前評価と末期での腫瘍による全身状態の悪化を画像として詳細に評価できたことにより、病態把握が容易に行うことができ、適切な治療法を選択できたと思われた。