眼窩下腫脹を主訴に来院したダックスの1例

亀戸動物総合病院 町田健吾

 

要約

症状およびレントゲン検査から歯周疾患が原因と考えられたため、麻酔下にて抜歯処置を行った。

 

症例

犬 ミニチュア・ダックスフンド 去勢雄 11歳
凛告:右眼窩下の腫れ(図1)

  • 犬 ミニチュア・ダックスフンド

 

口腔内所見

2年前に近医でスケーリングを行っているため、全体的に歯石の蓄積は軽度(CI=1)であり、歯肉炎も軽度(GI=1)のため、眼下が腫脹する程の歯周病に罹患している様には思われなかった。

 

レントゲン検査

右上顎第4前臼歯遠心根周囲の透過性の亢進を認めた。

 

仮診断

右上顎第4前臼歯遠心根の根尖周囲病巣による眼窩下膿瘍

 

麻酔下にて歯科処置

歯科用レントゲンにて再度根尖周囲透過性亢進像(図2)を認め、プローブにて口蓋側の深い歯周ポケット形成を認めたため第4前臼歯の抜歯処置を行った。(図3)

  • 麻酔下にて歯科処置
  • 麻酔下にて歯科処置

 

治療経過

麻酔処置後眼下の腫れもひき、再発もなく良好な経過をたどっている。

 

考察

ミニチュア・ダックスフンドは口蓋ヒダが深い事もあり歯周病に罹患しやすい犬種に思われる。そのため、口鼻瘻管や眼窩下膿瘍などに進行するケースも多い。
今回の症例では二年前にスケーリングしているため口腔内を視診するだけで第4前臼歯の根尖周囲病巣を疑うには証拠不十分である。そのため、次のステップとしてレントゲンを選択したところ、歯周病を示唆する所見が得られた。
この状況では、ミニチュア・ダックスフンドという犬種、特徴的な症状、レントゲン所見から第4前臼歯の根尖周囲病巣が原因であると強く疑われたため、飼い主と相談の上麻酔下での検査を選択した。
麻酔下では、さらに通常のレントゲンより鮮鋭度の高い歯科用レントゲンを撮影し、プロービングにて歯周ポケットの測定を行った。結果、さらに歯周病を示唆する所見が得られたため分割抜歯を行ったところ再発もなく良好な経過をたどっている。

当院では、歯周疾患の程度を評価する方法の中でも特に歯科レントゲンとプロービングに重点を置いて評価を行っている。
歯科レントゲンでは、通常のレントゲンに比べ歯周硬組織の状態がより鮮明に評価することができるため非常に有用性は高いと思われる。そのため、抜歯適応の判定、根管治療の評価、さらには鼻腔内の評価、口腔内腫瘍の侵襲程度などの評価にも積極的に利用している。
今回の症例のように歯周病の程度は麻酔をかけないと評価できないことが多い。また、歯科レントゲン、歯周プローブのような診断ツールを使いこなすことがより重要と思われた。