アンカーピンを用いて整復した小型犬の膝蓋骨内方脱臼の1例

はじめに

小型犬における膝蓋骨脱臼は動物臨床領域において頻繁に遭遇する疾患であり、先天性と外傷性に分類されるが、前者のほうが一般的であり、内方脱臼が外方脱臼に比べ圧倒的に多い。

 

症例

ポメラニアン、1歳齢、体重4.7kg左後肢の間欠的な破行を呈し当院を受診。

 

検査

徒手検査:左後肢は膝蓋骨が内方へ脱臼したままの状態であり、外側への圧迫で正常位への整復が可能であった。右膝蓋骨は内方への圧迫で容易に脱臼し後肢を進展させると正常位に整復が可能であった。

歩様検査:院内での歩様においてもスキップをするような歩行であり時折左後肢の拳上が確認された。

X線検査:左右膝蓋骨の脱臼が確認され、大腿骨の軽度内反変形がみられた。

X線検査

 

診断

左膝蓋骨脱臼グレード3、右膝蓋骨脱臼グレード2と診断された。

 

治療

症状が発現している左後肢のみ外科的整復を行った。術式は膝関節内側に皮膚切開後、関節内へアプローチを行う。関節包に切開を加え膝関節を露出、膝蓋骨を内側へずらし滑車溝の確認を行った。本症例においては滑車溝の形成は十分になされており、脛骨の内旋が膝蓋骨の脱臼を引き起こす主たる病態と判断し脛骨を外旋させ正常位へ整復した。大腿骨遠位外側にアンカーピンを設置し、さらに脛骨稜に小孔をあける。0号のエチボンドにてアンカーピン、脛骨稜をつなぎ、脛骨を外方へ牽引し正常位に整復。さらに大腿骨遠位内側にスクリューピンを設置し膝蓋骨の内方への脱臼を防止を行った。最後に関節包の縫縮を行い定法に従い創を閉鎖した。

治療

 

術後経過

現在術後3ヵ月で術後経過は良好である。