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重症膝蓋骨脱臼の治療

亀戸動物総合病院 山田 美友貴

はじめに

 膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨が解剖学的な位置から逸脱することで関節痛が発生したり、関節の屈曲伸展機構が正常に機能しない状態をいう。特に伸展機構が機能せず膝関節を屈曲の状態で歩行する重症膝蓋骨内方脱臼では、内側支帯(関節包)の解放、外側支帯(関節包)の縫縮以外に滑車溝造溝術、脛骨粗面転移術、脛骨内方回転の制御術、膝蓋骨再脱臼防止インプラントの設置などの各種の手技を単独または複数併用して実施する必要がある。
 今回、当院における膝蓋骨内方脱臼重症例における病態別の術式について、報告する。


  Fig.1 A:正常な膝関節 B 膝蓋骨内方脱臼

術式

1内側支帯の解放術、外側支帯の縫縮術
 外側の拡張してしまった関節包を楕円形に切開する。切開した関節包は後に内側のグラフトとして使用する。内側の関節包を切開解離し膝蓋骨を滑車溝に整復後グラフトを大腿直筋下または大腿直筋上を通したのち内側関節包欠損部に補てんし縫合する。グラフトを採取した後の外側関節包は縫縮する。


  Fig.2 内側支帯の解放術、外側支帯の縫縮術
      A: 関節包を楕円形に切開する
      B:グラフト作成
      C: 内側関節包欠損部に補てんし、外側関節包は縫縮する

滑車溝形成術
 術前に触診にて滑車溝を触診するとともにX線撮影(スカイラインビュー)を撮影して滑車溝の状態を確認する。また、手術時には肉眼的に確認する。十分な滑車溝がなければ、滑車溝形成術を行う。当院では関節軟骨の直下の海綿骨を高速ドリルで掘削したのち軟骨を押して落とし込むRoof-fall法を行なう。


  Fig.3 A:スカイラインビュー撮影法 B: 正常な滑車溝 C: 滑車溝形成不全


  Fig.4 Roof-fall法
      A:滑車溝の遠位端よりラウンドバーや振動チップを挿入し軟骨下を掘削
      B: 軟骨上部より圧力をかけて軟骨を落とし込む
      C: 滑車溝が形成される

脛骨粗面転移術
 踵を直角に曲げ足先をレントゲン台と垂直に保持した状態で、肉眼的観察、触診、X線撮影による脛骨粗面位置確認を行う。脛骨粗面が正常位置(正常な脛骨粗面は約25度内側にある)より内方に変位していれば脛骨粗面転移術を適用する。


  Fig.5 脛骨粗面転移術
      A:術前X線写真.右膝蓋骨脱臼グレードⅣ
      B:脛骨粗面転移術術後X線写真

脛骨内方回転制御術
 全身麻酔下で犬を横臥位にし、脛骨を最外側に回転させて、膝蓋骨が滑車溝内に整復されるようなら脛骨内方回転制御術が有効である。
 しかしながら脛骨外法回転時、膝蓋骨が滑車溝に容易に整復されない場合は、脛骨内方回転制御術に加えて、脛骨粗面転移術を行うか、再脱臼防止インプラントの使用を検討する。
 当院における脛骨内方回転制御術にはスーチャーアンカーと非吸収性ポリエステル 縫合糸エチボンド(Ethicon)を利用する。



  Fig.6 A:脛骨内旋制動術の適応検査 脛骨を内方および外方に回旋させ滑車溝に膝蓋骨が戻るなら脛骨内旋制動術が有効
      B:スーチャーアンカーを使用した脛骨内旋制動法


  Fig.7 A:脛骨内旋制動術 術前X線 B: 脛骨内旋制動術 術後X線

前十字靭帯断裂合併症例
 膝蓋骨脱臼と前十字靭帯断裂を併発した場合 当院では大腿筋膜を利用したオーバーザトップ法や関節外制動法併用する。


  Fig.8 A:筋膜グラフトを作成 B:グラフトを脛骨前面に回し関節内に引き込む
      C:鉗子を外側腓腹筋種子骨内側から挿入して筋膜グラフトをつかむ
      D:筋膜グラフトをつかんで引き出し脛骨粗面と関節包に縫合

再脱臼防止スクリュー法
 膝蓋骨整復後 再脱臼の可能性がある場合は 内側滑車稜近位端に再脱臼防止スクリューを設置する。


  Fig.9 再脱臼防止スクリュー A:再脱臼防止スクリュー挿入前 B:再脱臼防止スクリュー設置

まとめ

 犬の重症膝蓋骨内方脱臼に於ける手術方法は各種あるが、症状や病態にあった手術法選択する必要があり、そのためには病態をしっかり把握することがたいへん重要である。
 X線撮影、触診、および横臥位脛骨外方回転テストは 術式決定に大変重要な検査であと考えている。
 また、手術中は全身麻酔下にあるため筋肉が弛緩しており、病態が軽症化して見えることがあるので、覚醒後は筋肉が緊張することを十分考慮して、手術方法を選択すべきである。
 造溝術のRoof fall法では、軟骨を温存でき、また、膝蓋骨を作成した滑車溝に嵌合させるために、再調整や微調整ができるので有効な方法である。
 当院が再脱臼防止インプラントとして使用するFixin社のスクリューは、ヘッド部分が円筒状になっているため膝蓋骨の乗り越えの防御に効果が大きい。
 今後さらに症例数を増やして適応基準やガイドラインを明確にして行く予定である。

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